人員に余裕のない小さな会社でも異動により成長する裏技

先日、異動したばかりの管理職の人と話す機会がありました。一言でいうと、顔つきが違っていました。責任感によるプレッシャーを感じつつ、職場の雰囲気づくりにも積極的。今までの経験と新しく学ぶことを絶妙にブレンドして職場を良くしようとされている。

正直言って、前の職場で埋もれていては、こんな姿を見ることは無かったでしょう。「異動は人を成長させる」 その好例を見ました。

人材管理の茶化のイ・・・異動の回でも述べましたが、異動には本人と、所属していた職場のメンバーの成長が期待できます。

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小さい組織はなかなか異動させられない

ところが、異動させるには一時的とは言え組織の負荷が高くなることは事実。一人で多くの業務をこなす少数精鋭の組織においてはなかなか実現できないものです。

  • 人事、総務、経理を兼任
  • 受注、生産管理、苦情受付を兼任
  • 少人数なのでなんでもこなせるエースに頼り切っている

これではなかなか異動させてあげられないですよね。わかります。経営者であるあなたも、その組織の管理職も、本人も、ずっとジレンマを抱えているわけです。

  • このままだと、幹部候補として経験を積ませてあげられない。
  • その人がいなくなったら困るけど、今はそれを考えられない。(考えたくない)。。

とはいえ人材リスクマネジメントは急務

育成としては少し長い目線で考えても良いかもしれませんが、リスクマネジメント面では、早くなんとかしたいところです。エースが退職するようなことがあれば、会社は大混乱に陥るでしょう。

どうにかして、今いる人たちに引き継ぎますか?それとも中途採用で即戦力人材を採用しますか?

兼任が多い人材ですと、なかなか市場に存在しないというのが現実です。おそらく時間もコストもかかることでしょう。ただでさえ人手不足の労働市場ですから、長期戦と多額の採用費を覚悟した方が良いでしょう。

「辞めるなんて、まずないよ」

本当ですか?

今の時代、いつメンタル不調になるかわかりません。また、本人のケガ、病気だけではなく、親の介護というのも退職理由として増えてきています。

では、どうすればよいのか?

異動なんてなかなかできない小さい会社で、仕事の属人化を防ぎ、エースの成長を促進し、いつ来るか分からない退職の危機にも備える方法なんてあるのでしょうか?

手軽にできる解決策「プチ異動」とは

異動には負荷がかかります。

でも、異動をせずに他の職場の仕事を経験できれば目的は達成できるわけです。

プチ異動とは、私が名付けたメソッドです。

目安として、月間の業務時間の20%を他の職場の仕事に充てるというものです。この目安は組織によって柔軟に設計していただいて構いません。毎日90分、週に一日、あるいは半日を週に2回など。少しずつ、無理なく。

今の職場のメンバー、本人、プチ異動先で仕事を教えるメンバー、それぞれの負荷がどのくらい増えそうか?どのくらいまでなら許容できそうか?バランスをみて設計しましょう。

こんなことが期待できます

人材のリスクマネジメントにおける効果だけでなく、以下のような効果も期待できます。

  1. 社内での仕事のつながりを深く理解することで、本人の視野が広がる。幹部候補には絶対の条件。
  2. 新しい仕事を覚える中で、もっと効率的に仕事をできるのではないかという気づきが得られる。
  3. 他の職場の本当の悩みを感じることができ、職場間の相互理解が進む。職場の壁がなくなる。

なぜこのメソッドを編み出せたのか

実は中堅規模のメーカーにおいて「異動させたくてもできない」というジレンマを聴いていました。

ある時、サッカーマンガの「ジャイアントキリング」が組織の成長に大事なことを描いていると述べている書籍「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀」を読んでいるときに、ピンとひらめきました。

この本は「ジャイアントキリング」という大ヒットサッカーマンガを引用しながら、組織づくりのプロセスをわかりやすく解説しています。原作のタイトル「ジャイアントキリング」とは、日本語で言う「小よく大を制す」。破天荒な監督が弱小チームを変えていくプロセスがたまらなく面白いです。そしてジャイアント(巨人)である強豪チームを倒すシーンはとても痛快です。

ピンときた本の箇所は、この破天荒な監督がチームの練習において変わった練習をさせたのはなぜか?を解説したところでした。選手をいつもと違うポジションに配置して紅白戦をさせる。その時は、とにかくプレイが難しくて「監督はなんでこんな練習をさせるんだ?」と不満ばかり。でも、だんだんと「あいつはこんな気持ちでプレイしているのか」「自分のポジションのことをこんなふうに見ているのか」と、他のポジションの選手の気持ちがわかってきます。監督の意図は、お互いを理解することでコミュニケーションを深めることでした。

  • 「他の職場メンバーの気持ちを理解するのに、練習試合程度の短期間での経験でも効果があるのでは?」
  • 「異動による成長と人材リスクマネジメントの課題解決も、短期間での職務経験で効果を上げられるのでは?」

そんな着想から、メソッドを設計し、そのメーカーで提案しました。そして、無事に採用されました。

同じことで悩まれている多くの会社の経営者様に、少しでも悩みを解決していただきたいという想いでここに公開いたします。

実施する上での注意点

このメソッドは、気軽にできるというのがメリットです。ですが、本人にとっては新しい仕事を経験するというのは大きなストレスです。また、チームのメンバーにとってもインパクトが大きいです。導入するときには、以下の点に注意して進めましょう。

  1. まずは1つのタスクから始める。小さく始めて検証しながら広げていく。
  2. 本人には目的と期待値をしっかりと伝えて、やる気になってもらう。
  3. 送り出す側、受け入れる側、双方の職場に理解を得て、必要に応じてサポートしあえるようにする。

とくに2はイ・・・異動で説明した通りです。これでメンタル不調になっては意味がありませんので。

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いかがでしょうか?

  • プチ異動により成長する従業員の姿が目に浮かびますか?
  • 職場の壁がなくなり、コミュニケーションが良くなった職場が目に浮かびますか?

少しずつなら導入するハードルは低いですよね?

完璧を目指さなくても、「やらないよりはマシ」と割り切って、まずは気軽に始めてみてください。

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