賞与の査定が済んだ会社、これからの会社、それぞれだと思います。頑張ってくれた従業員を選んで、特別に報いる「Pay for performance(ペイ・フォー・パフォーマンス)」という考え方で業績評価制度を導入している企業も多いことと思います。
今日は、人材管理の茶化の最終回、ヒ・・・評価 についてお届けします。
実は不満の種になっている評価制度
ところが、この制度をしっかり運用しないと、従業員はやる気に満ち溢れるどころか、モチベーションを下げる結果になってしまいます。
従業員満足度を計測している会社もあると思いますが、従業員が不満を持つ要素で大きく反映されるのが、評価の「不公平感」と「不透明性」。
不公平感・・・なぜあの人ばかりが高く評価されるの? 上司に気に入られているから?
不透明性・・・頑張っているつもりだったのに。。。 じぶんはどうすれば評価してもらえるのだろう?
これらの不満からモチベーションを下げ、ひどいと退職してしまいます。一人だけでなく、職場で不満を共有しあうと、職場の雰囲気も悪くなってパフォーマンスにも影響します。
実際、いわゆるヒラメ社員(上しか見ていない)が存在したり、適正な評価をしない・できない上司が存在するのも事実。私もヒアリング調査を実施したところ、そういった事実が確認されました。「あの優秀な人にそんなひどい評価を続けていたのか。。」と愕然としました。
評価制度をあるべき姿に戻すPDCA
評価制度を作りっぱなしでは上記のような問題が起こるわけですが、せっかく作った制度なのでうまく活用したいですよね。
制度を見直しながら、「運用できる仕組み」をしっかり作っていきましょう。すべての仕事においてPDCAサイクルをしっかり回すことが大事ですが、その切り口で考えるとわかりやすいですね。
Plan | 制度設計にもうひと工夫 |
〃 | 運用できるように準備・教育 |
Do | 評価の実施 |
Check | 実態を把握する |
Action | 問題があれば厳しく対処する |
制度設計にもうひと工夫
評価は2軸で
「業績評価」は目標のKPIを達成したかどうかで評価するものです。ですが、果たしてその評価だけで、その人が「これからの会社にとって重要な人材かどうか」を判断できるのでしょうか?裏技を使ってたまたま業績が良かっただけだったら? 他の従業員を踏み台にして手柄を横取りしていたら? 自分の仕事しかせずに職場での協力が無く、雰囲気を悪化させていたら?
簡単な言葉では勤務態度となりますが、もっと深いその人の行動や「在り方」も評価したいですね。
GE(ゼネラルエレクトリック社)の9ブロックで有名ですが、業績と行動の2軸で評価しましょう。ちなみにGEは上記のような「業績は良いが行動はひどい」社員がリストラの対象になったそうです。
また近年はコンピテンシー評価の導入も進んできていますが、これも同じ考えです。いずれにしても、業績だけに偏って評価することは職場をダメにしますので、2軸での評価をしていない場合は導入をご検討ください。
評価を上司だけに任せない
また、上司だけでなく上下左右(部下、同僚、関連部署)のメンバーに行動を評価してもらう「360度評価」というやり方もあります。これにより、特定の上司に評価が偏ることを避けられますので、お勧めです。
360度評価の簡単な導入方法
今はクラウドサービスで簡単に実施できる360度評価がたくさんありますので、それを導入するのが一番早いです。外部に頼らずに実施するとしたら、評価してほしい人にメールなどでお願いし、その結果をまとめるだけでも十分です。質問内容は、
- 「OOさんの良かった行動は何ですか?」
- 「OOさんが見直した方がよいという行動は何ですか?」
というのが一番シンプルです。もちろんいくつかの項目(コミュニケーション、戦略性などのコンピテンシー)に沿って評価しても良いのですが、何人もの評価をしないといけない人がいると多くの質問に答えるのは大変です。できるだけシンプルに評価することをお勧めします。
人事部門が上司の評価スキルを検証して公平性を保つために行うこともできます。また、上司自身が評価依頼をして、自分が行う評価の参考にするという方法もあります。いずれにしても、公平性が高まることと、「実は陰で頑張っている人」をしっかり評価してあげることができますよね。(逆もまた然りですが。。)
運用できるように準備・教育
評価者を評価する
上司の方々は、適正な評価をしていますか? これをブラックボックスにしてしまうと組織としてはまずいです。評価スキルがある人と無い人、あるいは自分の好き嫌いで不公平な評価をあえてしている人は一定程度存在しています。まずはこれを見抜くところからですね。実際の評価結果と本人のパフォーマンスを見比べて、おかしくないかを確認する。前述した360度評価と組み合わせると偏りがあぶりだされます。まずは、
- 今までのデータをできるだけ多く確認して、おかしな点が無いかをチェックする。
- 何人か極端な評価(甘すぎる・辛すぎる)をしている上司とその部下にヒアリングして、事実関係と考え方を確認する
- 評価スキルが低いと評価した場合、評価の考え方と作法についてじっくり教育する。
もちろん、評価者全員に対する教育は粘り強く続ける必要がるのですが。。。
実態を把握して、厳しく対処する
評価者自身は、「自分の評価は正しい」と思い込んでいます。いくら教育の機会を設けても右の耳から左の耳に通り抜けます。上記の評価者評価は手間がかかる地道で大変な作業ですが、評価者に完全に任せてしまっては、評価制度はうまくいきません。
評価制度を運用するのは、結局は人なんです。
なお、どれだけ説明しても、教育しても変わらない場合はどうするか? どうしても適正な評価をできない人は管理職失格です。それとも、その人をそのままにして組織がおかしくなることを容認しますか?
人の事は不可逆
はっきり言って、人事制度は運用が大変です。経営者・人事部門・各職場の上司の全員が、しんどいけれども歯を食いしばって真面目にやるべきことをやりきるしかないです。私がよく言う言葉ですが、「人の事は不可逆」なのです。これは、一度起きてしまったら元には戻らないのが人事の難しいところという意味です。メンタルを壊してしまうと完全に前のようには戻りません。退職してしまったエース社員を再度入社させることはできません。これを肝に銘じて、もうひと踏ん張りしたいところです。
今回は、少し厳しい話をしました。ですが、弱い立場の従業員は、企業の一番大切な資産です。満足度を高めて幸福になっていただかないと、会社が見限られてしまう。少子化が加速し人手不足が信じられないスピードで進行する中、何を優先するか?評価というのはブラックボックスになりがちですが、透明性と公平性を確保して、だれもが気持ちよく働ける環境を作っていきましょう。顧客ファーストの前に、従業員ファーストですよね。
茶化はチェックポイント
ここまで、人材管理の茶化(サ、ハ、ホ、イ、ヒ)という切り口でお届けしてきました。語呂合わせで覚えやすいと思いますので、是非チェックポイントとしてご活用ください。いくら良い活動をしていても、足らない点があればすぐに不満が大きくなるのが人事のつらいところ。しっかりと土台を固めていきたいですね。