先日、商工会議所青年部で「採用できない時代の生き残り戦略」と題してお話しする機会がありました。
会場で交わされた言葉は端的でした――「人は来ない、来ても続かない」。しかし、私が強調したのは派手な求人施策や大きな投資ではありません。
研修で参加者の反応が最も強かったのは、社内の“当たり前”を磨くこと、つまり内部マーケティングの重要性でした。
本稿では研修のハイライトに沿って、特に経営者・現場責任者が今日から取り組める「内部の整え方」と「社内魅力の発信」のポイントを、現場目線で整理します。
なぜ内部マーケティングが採用の鍵になるのか
採用は外向きの活動に見えますが、求職者が最終的に判断するのは「その会社で自分が働くイメージが持てるか」です。求人広告やSNSでどれだけ良いことを書いても、入社後の実態と乖離があれば早期離職につながります。
研修で繰り返した結論はシンプルです。外に向けた発信は、内側が整って初めて説得力を持つ。
内部マーケティングは「従業員を会社のファンにすること」。ファン化した従業員は自然と会社を紹介し、採用の強い味方になります。
多様な人材の配置を意図的に設計する
多様性は単に採用することではなく、配置の仕方で効果が変わります。
若手、Uターン、女性、シニア――それぞれが持つ強みを活かす配置を考えていますか?
- それぞれの特徴を理解する:個性を分析するツールを活用し、強みを見つける。苦手なことをさせても伸びない。
- 役割を細分化する:一人に多くを任せすぎない。業務を分解して「できること」を増やすと、育成が進みやすい。
- ロールモデルを見せる:同世代や似た境遇の先輩が活躍している姿は、入社希望者にとって強い安心材料になる。
これらは大がかりな制度改定を必要としません。まずは一つの職場で試し、効果が見えたら横展開する。小さな実験を繰り返すことが重要です。
ねぎらいと感謝を仕組みにする
「ねぎらい」は感情論ではなく、運用できる仕組みに落とすことが肝心です。
研修で参加者が共感したのは、日常の小さな承認が離職防止に効くという点でした。
具体的には次のような仕組みが有効です。
- 日常的な承認のルール化:週に一度、現場リーダーが「今日の良かったこと」を短く共有する時間を設ける。形式は朝礼の一部でもチャットでもよい。
- 感謝の見える化:月次で「ありがとうカード」を回す、あるいは社内掲示で小さな成功を称える。
- 報酬以外の還元:学びの機会や勤務調整など、金銭以外の“ありがとう”を制度化する。
ねぎらいは一度だけのイベントではなく、継続的に行うことで「ここに居てもいい」という安心感(心理的安全性)を育てます。
投資と改善で利益体質をつくる
研修で最も強調したのは、人材確保と定着の要は「賃上げを継続できる利益体質」をつくることだという点です。外向きの発信や福利厚生だけで人が定着する時代は終わりました。
給与の業界水準をあきらめず、着実に報酬を上げていくためには、設備やシステムへの投資や改善活動を通じて生産性を高め、その成果を給与に還元する仕組みが不可欠です。
まず押さえてほしいのは視点の転換です。賃上げはコストではなく、将来の稼ぐ力を高めるための投資です。
投資を行い、改善サイクルを回して生産性が上がれば、利益率が改善し、そこから賃金を引き上げる余地が生まれます。
逆に賃上げを約束しても、収益基盤が弱ければ持続しません。
だからこそ、
- 投資
- 改善
- 賃上げ
の流れを社内で合意し、実行することが先決です。
若手世代の傾向をどう受け止めるか
研修で触れた若手の特徴は、意味(WHY)を重視し、成長実感を求める点です。優しさだけでは「ゆるブラック」と受け取られ、逆に離職を招くことがあります。現場でできる対応は次の通りです。
- 仕事の意味を翻訳する:単なる作業が「誰のために、どんな価値を生むか」を具体的に伝える。
- 小さな成功体験を設計する:短期で達成できる目標を設定し、達成を認める。
- 対話の頻度を上げる:短い1on1や日々の声かけで「見られている」感を作る。
若手は「放っておかれること」を最も嫌います。放置ではなく、適切な関わりを仕組み化してください。
最後に――まずは「一つの仕組み」を作ることから
研修で最も伝えたかったのは、完璧を目指す必要はないということです。
- 多様な人材の配置
- ねぎらいの仕組み
- 社内魅力の発信
――この3つのうち、まず一つを今日から始めてください。
小さな改善が積み重なり、やがて採用力と定着力の両方を高めます。
最後にひとつ。まずは気軽に話してみませんか。
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