この数年で、新しく社員を迎えられた際や、あるいは日頃から会社の若い社員の方々と接する中で、「以前の若い人たちとは、少し感じが違うように見えるな…」と感じられることはございませんか?
新しく社員を採用された会社の皆様からはもちろん、現場で若い社員さんを指導してくださる社員の方々からも、そういったお話を伺う機会が増えております。
この「以前との違い」の大きな理由の一つに、彼らが学生として過ごした新型コロナウイルスの影響を受けた期間があります。
今回は、この背景を踏まえ、特に新しく入社された若い社員の方を現場で教えていく際(OJT)に、気をつけていただきたい点についてご説明いたします。
コロナ禍が、新人さんに与えた影響とは
彼らは、高校や大学といった、人間関係を広げ、社会で人とどう関わるかを学ぶ上で大変重要な時期に、対面での交流が大きく制限されるという特別な環境を経験しました。
学校の授業がオンラインになったり、友人との集まりやイベントが中止になったり、アルバイトなどで様々なお客様やスタッフと関わる機会も減りました。これにより、職場のような、多様な年代や立場の人々が集まる「実際の場所」での「人との関わり方」を、体で覚える機会が、これまでの世代に比べてかなり少なかった、という背景があります。
この経験が、いざ会社の現場に入ったときに、様々な形で影響として現れることがあるのです。
OJTで気をつける3つのポイントとは
このコロナ禍による「人との関わり方」の経験不足を踏まえ、OJT期間中に現場の担当者や先輩社員の皆様に、特に気をつけていただきたいポイントを3つご紹介いたします。これらの点を少し意識していただくだけで、新人さんとのコミュニケーションがスムーズになり、より効果的な育成に繋がります。
ポイント1:新人さんからの質問や相談は「待つ」のではなく「積極的に声をかけて引き出す」
なぜこれが大事か: オンラインでのやり取りに慣れており、相手の様子を直接見て話しかけるタイミングを計ったり、「どこまで聞いて良いか」に迷ったりする経験が少ない方がいらっしゃいます。また、「こんな簡単なことを聞いても良いのだろうか」「忙しいのに申し訳ない」といった遠慮から、質問をためらってしまう傾向が見られます。
OJTでの注意点: 「何か質問はありますか?」と尋ねるだけでは、ほとんどの場合「ありません」という返答で終わってしまいます。これは、分からないことが無いのではなく、質問の仕方やタイミングに迷っている、あるいは遠慮している場合が多いのです。
具体的な対応: OJT担当者や周りの社員の方から、「この作業は少し分かりにくいところだよ」「ここまで、きちんと理解できたかな?」と具体的に声をかけ、理解度を確認してみてください。 そして、「分からない時は、いつでもチャットで連絡して大丈夫だよ」「もし今、手が離せない時は、こう合図するから遠慮なく」など、質問や報告の方法を分かりやすく伝えてください。「どんなに小さなことでも、遠慮なく聞いて良い」というメッセージを繰り返し伝えることで、新人さんは安心して質問できるようになります。

ポイント2:チームのメンバーとの「ちょっとした交流のきっかけ」を作る
なぜこれが大事か: 学生時代に多様な人々との実際の交流機会が限られたため、職場のような様々な年代や立場の人々が集まる場での「自然な形での人間関係の築き方」に慣れていない場合があります。親しい友達との深い繋がりは得意でも、職場での「なんとなくみんなで仕事をしている」という場での溶け込み方に戸惑うことがございます。
OJTでの注意点: 放っておくと、OJT担当者以外の社員とはほとんど会話せず、チームの中で少し孤立してしまうことがあります。休憩時間などのちょっとした会話に入りそびれてしまう、といった状況も見られます。
具体的な対応: OJT担当者が中心となり、他のチームメンバーに新人さんを丁寧に紹介したり、業務で関わる際に「〇〇さん(新人さん)に△△のこと聞いてみてくれるかな?」と話すきっかけを作ったりするのが有効です。 お昼休憩の際に「もし良かったら一緒にどうぞ」と声をかけたり、仕事と直接関係ない軽い会話の機会を設けることも、チームに馴染む良いきっかけとなります(無理強いはせず、あくまでお声がけを)。

ポイント3:「職場の雰囲気」や言葉以外のサインの読み取り方を手伝う
なぜこれが大事か: 実際に顔を合わせて行う集団での活動経験(会議や打ち合わせなど)が限られたため、人の顔つき、声の感じ、その場の雰囲気といった、言葉以外の情報から状況を読み取る練習が、まだ十分でない可能性があります。私たち上の世代が当たり前にやっている「言わなくても分かるだろう」「空気を読む」といったことに対応するのが難しい場合があります。
OJTでの注意点: 会議中にいつ発言すべきか判断に迷ったり、相手の顔色を見てどう対応して良いか分からなくなったり、上司や先輩からの指示の言葉の裏にある「こういう理由で、こうしてほしいんだ」という気持ちを読み取りきれないことがあります。
具体的な対応: 会議などに同席させる際は、単に座って聞くだけでなく、後で「今の会議の一番大事な点は〇〇でした」「△△さんのあの時の顔つきは、たぶんこういった意味だったんですよ」「あの時、みんなが黙っていたのは、こういう理由があったからです」など、その場の状況や言葉以外のサインについて、言葉にして丁寧に解説してあげてください。 新人さんが発言された際には、内容だけでなく「あの時の発言、タイミングが良かったね!」「あの時は、もう少し他の人の意見を聞いてからの方が良かったかもしれません。少し難しかったかな?」といった形で、話し方やタイミングについても具体的にフィードバックすることが、本人にとって分かりやすい学びになります。
大事なのは、彼らの「経験」を理解し、私たちが少し「教える」こと
これらのポイントでご紹介した「以前との違い」は、彼らが決して能力が低いということではなく、コロナ禍という特別な状況で、私たちが若い頃に当たり前に経験してきた「人との関わり方」を学ぶ機会が少なかった、という「経験の差」によるものです。
だからこそ、OJT担当者や先輩社員の皆様が、この背景を理解していただき、「見て覚えろ」「自分で察しろ」という姿勢ではなく、彼らが安心して職場の環境や、人との関わり方を学んでいけるように、少しだけ「丁寧」に、少しだけ「具体的に」関わっていただくことが、大変重要になります。
彼らは、インターネットやスマホを使いこなすスキルや、既存の考えにとらわれない新しい視点といった、素晴らしいものも持っています。彼らの良いところを伸ばしながら、足りない経験を私たちが寄り添ってサポートしてあげることで、きっと会社の頼もしい力になってくれるはずです。
いよいよ始まるOJT期間、この情報が皆様の新人育成に少しでもお役に立てれば幸いです。

